OReCLE - イントロダクション


ルーセント傀儡王による治世が始まって数年。
世界は、緩やかな落陽を待つのではなく、
新たな太陽を創り、掲げることを選んだ。

反乱が、革命が、戦争が始まったのだ。

そして、その波は遥か遠く、北の都アイエンティにも及ぶ。
「学徒巫女(オラクル)」と呼ばれ、
"先天的に異界の知識を持つ者"の一握りは、
その知の内側に、戦略的な価値を見出された。

彼女らの叡智は"異界の兵器"を再現し、
反乱軍の執り行う、"王殺し"の効率を高めていく。

その陰で、心を躍らせる者がいた。

商人だ。

世界が駄目になろうかどうか、という瀬戸際にあって、
彼らは、未だ体験したことのない商機に戦慄いていた。

"彼女ら"がいれば、
"未だ活用されていない智慧"があれば、

相手が王国だろうと、反乱軍だろうと構わない。
売れる。築ける。当代の財を。

この質素で、ちっぽけな、末端の世界において。
せめて滅びゆくまでの間、
財の優悦に浸ることだけは出来る。

「―――なんて愚かで、身の程知らずな夢だろう。」

だが、それで十分だった。

商人が、"彼女ら"を買い付けた理由は、
それで十分だったのだ。